自立と連携を支える社会資本整備
これまで首都圏とのアクセス向上に向けたネットワークが整備されてきましたが、東北のように広い国土に人口が分散している地域では、地域の自立と連携のために、これからは都市間を短時間で移動できる高速交通体系が必要です。地域連携を実効あるものとする、ラダー(梯子)型の地域構造の形成、循環系高速交通網の整備が不可欠です。
分散した地域をつなぐ知的ネットワークとして情報通信基盤の整備が急がれており、高速・大容量の光ファイバー網、ケーブルテレビ網などの整備が必要です。これにより、行政・医療福祉・教育・防災などの地域に密着した情報提供、情報産業の育成、先端技術の研究開発拠点の連携が可能となります。
国際交流の活発化に向けて、仙台・新潟圏のゲートウェイ機能強化が需要であり、各地域からアクセスするための高速交通網の整備を促進します。また、長期的な視点に立って、東北および日本の国際交流拠点となる新東北国際空港の検討を進めます。
住む人と訪れる人に快適な空間を提供するために、ゆとりある住宅、下水道、都市公園などの生活関連の社会資本整備が重要です。高齢化に対応したバリアフリー化や、中心市街地の賑わいを取り戻すためのまちづくりも課題です。
左/国際交流のゲートウェイ機能(新潟東港)
中央/都市間ネットワークを強化する新幹線(山形新幹線)
右/域内アクセスを強化する高速道路網(東北・磐越道、郡山JCT)
地域主権による分権社会の構築
中央依存から脱却し、地域の自己責任と自己決定による自立的な地域経営が求められています。地域経営の担い手として行政だけではもはや限界に来ており、これからは地域住民、NPO、企業、大学など多様な主体が参加し、それぞれの役割を担っていくことが必要です。各主体の参加意識を高めていくうえで、情報公開と外部からの政策評価に基づくアカウンタビリティが不可欠です。
自立的な地域経営を行うために、肥大化した財政需要を見直し、民間へのアウトソーシングなど思い切った行政改革の断行により、歳出の削減・効率化に努め、自治体財政を立て直すことが必須であり、また、自治体の政策立案能力の向上が必要です。地方分権一括法の施行により、中央省庁から権限委譲が行われますが、地方の自立の裏付けとなる財源移譲が行われておらず、国税から地方税への財源移譲による自主財源の確保が今後の重要な課題です。
人口規模が小さい自治体は行政上の基礎的負担が相対的に重くなっており、自立的な地域経営を推進するうえで、東北の512市町村の合併推進は避けて通れない課題となっています。地域の個性や多様性を尊重しながら、地域経営の担い手として自立できる適正規模に向けて、自主的な市町村合併を一層促進することが必要です。
環境文化首都(イメージ図)
首都機能移転は、日本の構造改革と分権社会の構築に不可欠であり、国会等移転審議会の答申を受けて、政府ならびに国会は、国民的合意形成に向けて強力なリーダーシップを発揮する必要があります。当会は、首都機能移転の意義と必要性について引き続き地域の合意形成に取り組み、当会が提唱した「環境文化首都」の実現に努めます。
行政の枠組みを超えた広域連携〔東北広域連携圏の形成〕
自立した地域がより効率的、効果的に問題を解決し、国際社会の中で競争力を高めるためには、既存の行政の枠組みを超えた地域間の連携が必要です。また、官民の多様な主体の知恵と汗をそこに結集するような、開かれたネットワーク型社会の形成が求められています。「全国総合開発計画~21世紀の国土のグランドデザイン~」では、東北地域整備の基本方向として「生活、産業、文化等の各般の面で広域的な連携・交流を推進し、これを通じて東北地域全体としての調和のとれた発展を図る」ことが示されています。
地方分権一括法の施行により地域は自らの選択と責任による自立を求められています。東北は、これまでも東北インテリジェント・コスモス構想のような取り組みを通じて、東北七県の官民が一体となり成果を上げてきましたが、従来以上に県境を超えて取り組むべき多様な共通課題に直面しています。
今こそ、世界の中の東北という視点に立ちながら、東北七県の官民がより強固に連携する「東北広域連携圏」を形成することにより、東北として共通に抱える弱みを克服し、強みを活かし、地域の総合力を発揮する絶好の機会です。
東北の総合力発揮に向けた意見交換
(東北7県知事との懇談会)
東北広域連携圏においては、高速交通体系など基礎的社会資本の効率的な整備や、環境・防災、医療福祉、広域観光、国際交流、広域物流、産学官連携、新技術・新産業創造、高度情報化、学術研究・高等教育など、県境を超えた広域的な取り組みが有効であるような課題について、東北地域が一体となって取り組むことが必要です。 そのため東北七県の官民で構成する「東北広域連携推進会議」(仮称)を設立し、広域的な地域経営の推進主体を確立します。こうした取り組みを通じて新たな地域発展の機会の創出や、地域が提供するサービスの高度化が図られ、東北広域連携圏の形成が着実に進むものと思われます。